(だったら、これから毎日だって何か小さなお願いを叶えてあげて、その対価としてあの唇を……って、ああ、僕は何考えてるんだ! いつも対価に破廉恥なことを要求する最低野郎だと勘違いされでもしたら……)

 こんなことではいかん! と魔王はかぶりを振った。

(はっ、今こそ禁呪である時間戻しをおこなうときか!?)

 魔王の中で、『そんなわけないだろ!』と突っ込む声と、『それにあれはなかったことにしたくない……』とこっそり訴える声が上がり、その案は棄却となった。

 魔王はなけなしの理性を総動員した。

 王女も素直に応じてくれたことと最高のシチュエーションだったことを鑑みると、このあとさえ失敗しなければ、まだ取り返しがつくだろう。

(だって直後の王女はぼうっとしてただけで、嫌悪感や不快感みたいなものは感じてなかった。これは断言できる……)