ジャリ ジャリ
ほぼ完成間近でようやくコンクリートに小石を踏んで歩く足音に気付いて手を止めた。
お母さんかな?と思って振り返ると、
「チョコ食うか?」
「…………。」
知らない人
知らない男の人
なんだか怖くて答えられなくて、しゃがみこむ身体が固まってしまって、でも目を反らせなくて。
「絵、書いてたんか?」
「……………。」
「上手いじゃん。」
「……………。」
「まだ戻らないのか?」
「……………。」
笑顔の男の人とは非対称に私の顔は唇をぐっと閉じて、話しかけられた怖さと恥ずかしさで表情はない。
ポリポリと頭をかき、困ったような、でも何処か慣れているかのような優しい雰囲気で、もう一度同じ言葉を言われる。
「チョコ食うか?」