「ここが王宮…。すごいのね」

馬車を降りたクリスティーナは、間近にそびえ立つ豪華絢爛な建物を見上げて呟く。

「行くぞ」

父に短く告げられて、クリスティーナは急いであとを追った。

何人もの仕え人がハリスに頭を下げて扉を開ける。
それを何度も繰り返し、いよいよ国王との謁見の間に通された。

「お前はここで待っていなさい」

そう言い残し、ハリスは広い部屋に入って行く。
クリスティーナは廊下の壁際に控えて待っていた。

(なんてふかふかの絨毯。壁の絵画や壺も煌びやかなものばかり)

ここが国王の住まいなのだと納得させられる。

(そんな所に出入りするお父様は、本当にすごいのね)

お辞儀をする人達の前を横切っていく父の背中は、威厳に満ち溢れていた。

(私達に見せる優しい笑顔のお父様とはまるで別人だった。険しい表情で…。それほど気を抜けない厳しい日々を送っているのね)

少しでも父の力になりたい、クリスティーナはその思いを強くしていた。