両国の関係はうまくいっている。


互いに足りないものの多い国同士だ。狙い通り、補い合うにはちょうどよいらしい。同盟を結んだ先王たちは、優秀な為政者だった。


オルトロス王国は、暗がりゆえに、国土の地図の作成も十分とは言えない。

木材から作る蝋燭は、暗闇に包まれたオルトロスでは生産数が少ない。


アマリリオ王国から提供される蜜蝋は、ミエーレと名付けられ、ほのかな香りと柔らかな明かりを届けている。


オルトロス王国からは、星を編んだ織物を特産品として輸出している。


日差しを浴びるとまばゆく瞬く白銀の織物は、軽く涼やかな音がして、カーテンの裏に吊るしておくと熱を吸収する。

特に、アステルと名付けられた夜の国謹製のものは、熱と紫外線を遮る効果が高い。


熱い室温が少し下がり、見た目が綺麗で、日除けにも効果があるということで、子どもや女性の部屋の窓にかける家が増えている。


かつて、故郷で日の光に目が眩んでばかりいた蛹は、夜の穏やかさにあてられて羽化をした。羽は焼け焦げず、自由を保障され、歩き回れるようになった。


今は分かる。


わたくしにとっての幸せは、涼しい風のような、少し低い夫の体温のような、ひんやりとした温度をしている。