身代わり同士、昼夜の政略結婚

かつて月に焦がれて、大陸の果て、夜の果てまでやってきた人々は、その暗い大地に線を引き、オルトロスと名前をつけた。

オルトロスは、金の目を持ち、黒い羽に包まれた彼らの祖先、鳥神の名からとったそうだ。


その由来ゆえに、オルトロス王国では、黒い髪の子どもが生まれやすい。また、数十年に一度、王族の中に金の輪の瞳を持つ者が現れる。


夜目の効く先祖返りの目は、オルトロス王国では畏怖と共に受け入れられるものの、他国から見れば異様に映る。


アステル以外、今のオルトロス王国に金の輪の目を持つ王族はいない。ある異国の者が梟殿下と呼んだ。


見た目で判断されて苦い思いをすることが多かった経験から、みの虫と呼ばれる姫の心労を憂い、兄の代わりに相手に立候補した——ということを、アステルは慎重に言葉を選んで話した。


「あなたの金の目は、わたくしの蜂蜜の髪と同じ色です。アマリリオ王国では、金はうつくしい色、気高い色を指すのです」


アマリリオ王国では、王族は金の髪と向日葵が咲く瞳を持って生まれる。


太陽に向いて咲く花の神を祖先に持つためと言われているわ。わたくしも、蜂蜜の髪と言われていたから、自分の髪の色は聞いて知っている。


アマリリオ王国での黄金は、希少さゆえに価値ある金属なのではない。色の高貴さゆえに尊ばれ、価値あるものとされている。


「蜂蜜は、黄金の蜜、太陽の色をした甘い液体で、アマリリオ王国では最上の甘味を指します。召し上がったことはございまして?」

「いいえ、残念ながら。でも、あなたのオルトロス入国にともない、蜜蝋を多数いただきました。元は同じと聞いています」


よい香りですね、と笑うアステルの目が、本当の三日月のように半円を描いた。やっぱり綺麗だわ。