身代わり同士、昼夜の政略結婚

大きく息を吸って、吐いて、一呼吸置いたアステルが、噛み締めるように唇を震わせた。


「私を選んでくださって、ありがとう」

「いいえ。あなたがこの婚姻のお相手で、わたくしは幸せです」


ありがとう、をもう一つ落として、アステルは椅子に座り直した。


「ミエーレ。私が、梟殿下と呼ばれているのは知っていますか?」

「ええ」


きょとんとした反応に、理由は知らないとふんだらしい。節の高い指が、くるりと目の横で円を描く。


「目がね、少々特殊なんです。初めて見ると怖いかもしれません」

「まあ」


そうなの? 不躾ながら、ベール越しにじいっと目を見てみたけれど、よく分からないわ。


「ベール越しだと分かりにくいかもしれないですが、外すとよく見えてしまうから、先に伝えようと思いまして」


あなたが勇気を出してくれたのに、怖がらせるのは忍びないですから。


「あら、あなたなら怖くありませんわ。それにわたくしだって、みの虫ですもの」


今は数が減っているけれど、以前は布が重なりすぎて、前が見えないほどだった。


自分では見えないだけでも、頭に大量に布をかぶった娘など、対面したら恐ろしく奇異に映るに違いないわ。


ぴ、とベールの端を摘んでみせると、アステルは吹き出した。


「あなたは全然みの虫ではありませんよ。もうすっかり顔も見えますし」

「あら、どんな顔です? わたくし、眩しくて鏡が見られなかったものですから、自分の顔がよく分かっていないのです」