「アステル。わたくし、勝手を申しますわ」

「ええ」

「どうぞ、哀れにお思いくださって構いません」

「いいえ、そのようなことはありませんとも」


いいえ、いいえ。あなたはこんなに優しくていらっしゃるのに、本当に、勝手で哀れな願いなの。


「わたくし、早くあなたと婚姻を結びたいのです。あなたは待ってくださるけれど、……わたくしが、もう、待てませんわ」


ですから。


「残り二枚を、一度に取ってしまおうと思っていて。最後くらい、自分で頑張ろうかと思うのです」


少し間を置いて、はい、と静かな返事があった。

返事をすることに迷いはなく、しかし何と返事をするかには確かな迷いがあった、明確に言葉を選んだ間だった。


「わたくし、ベールを外した後に初めて見るのは、アステルがよかったの。いけないでしょうか……」

「いいえ」


組んだ両手を、上から握られる。


「やはり私は、あなたを哀れになど思いません。私の未来の妻は、随分といじらしくていらっしゃる」