身代わり同士、昼夜の政略結婚

鳥が鳴くのを、こちらに来てからよく聞く。鳥は暗くても鳴くだなんて、国を出なければ知らなかった。


「アマリリオでは、子どもだともっと体温が高いんですよ。人によっては熱いくらいで」

「発熱しているということですか?」

「発熱……ええと、病気ではなくて、あくまで体温が高いという意味での熱いになります。そういう人を、ぽかぽかだねと褒める意味で、ひなたの人って言うんです」


ふふ、とアステル殿下が噴き出した。かわいらしいですね、と相槌。


「こちらだと、手指の先が冷えることを、銀になるって言うんですよ」

「金属は温度の変化が分かりやすいですものね」


つめたーく冷える指は、まさしく金属でできたように芯まで冷えることがあるという。


「ミエーレ殿下は、小さい頃、ひなたの人でしたか?」

「ええ、毎日ぬっくぬくのお日さまでしたよ。よく母にくっついて……」


懐かしく思い返した情景が、脳裏を掠めて止まった。


「ミエーレ殿下? どうされました?」

「いえ、ひとつ、気づいたのです」


息を吸っただけなのに、喉がひりついた。ご飯は随分と前に食べたのに、今さら胸焼けしそうだった。


「幼い頃、よく母が抱きしめてくれて、『あなたはひなたの人ね』って笑ってくれました。そのときは、アマリリオにいても眩しくなかったなあと、思い出して……」


あれは多分、母が肩口に顔をつけさせてくれて、視界を塞いでくれたのだ。

本当にひなたの人のときも、そうでないときも、わたくしは母の部屋に行くのが好きだった。


気づかなかった。ずっと。