身代わり同士、昼夜の政略結婚

「こちらまで連れて来ていただきましたから、もうご想像はついていらっしゃるかもしれませんが……わたくし、オルトロス王国の明るさにまだ慣れておりませんの」


夜の国だとか暗さだとか言わないよう、細心の注意を払う。今のところ、この方にもこの国にも、何も悪い印象はない。


わたくしは、いろいろとできないことの多い王女だ。言葉選びくらいは気をつけたい。


「アマリリオ王国の明るさは、わたくしにとっては過度に眩しいものでした。ですから、ベールを厚くかぶっておりました」

「聞き及んでいます」

「目が痛くなくなるまでベールをかぶりますと、前がよく見えないのです。ですからいつも籠に乗っておりまして、徒歩にも不慣れな有り様で……」


前も見えず、運動もできず、体が弱い。実は、第一王女の代わりを申し出たにしては、わたくしはあまりよい王女とは言えないのである。


「では、やはりまずは散歩から歩く練習をいたしましょう。私がおそばにいますから、こちらの暗さに、少しずつ慣れてくださると嬉しいですね」


ああ、と思った。やっぱり、この方は細やかだ。


明るさではなくて、暗さ。

そばにいるとは言うけれど、安心してほしいとはつけない。