身代わり同士、昼夜の政略結婚

「こちらは何のお部屋でしょう」

「あなたのお部屋です。どうぞお好きなようにお使いくださいね。今は下がらせていますが、侍女をつけますから、後で声をかけてやってください」


第二王子妃の、とは言わないところに配慮がある。


あなたと言われる方が、わたくしのためだけに用意してくれたみたいで柔らかい言い回しだもの。


「ありがとう存じます。お世話になります」


ここは殿下の屋敷で、わたくし専属の世話係は五人も選んでくださったのですって。どんな方々なのか、ご挨拶するのが楽しみだわ。


「あなたにお会いするのを楽しみにしておりまして。みな、精一杯あなたをお世話するのだと張り切っています」


使用人とのよい関係が伺える。細やかだからそうじゃないかと思っていたけれど、慕われる人のようでよかった。


「ありがとう存じます、光栄ですわ。くつろぎやすいお部屋ですね」

「それはよかった。明かりはこのくらいで構いませんか?」

「ええ。ありがとう存じます」


多分、この部屋にはおそろしい金額が掛かっている。

実を言うともう少し明るくてもいいのだけれど、色の判別がつくのだから、これ以上は望みたくない。慣れれば大丈夫よ、きっと。


この明るさにするために、あちらこちらに蝋燭が灯してある。


夜の国は一年中明かりを灯す国とはいえ、数が多い。

燭台の並びが不規則すぎるから、わたくしのために無理矢理置いたに違いなく、通常の倍以上が灯されているのは想像に難くない。