わたしはいつの間にか自分の家の前に戻ってきていた。

山の中で眠ってしまったわたしを菅生さんが車まで運んでそのまま家の前まで送り届けてくれたのだ。


「それじゃあ刀利サン、またね。ご両親にバレないよう気をつけて」

「……、はぁい。ふわぁ〜〜」


寝ぼけ眼で菅生さんを見つめ、大きなあくびをしながら背を向ける。玄関ドアの前まで歩みを進めてから、ふと言わなければならないことを思い出す。


「送り届けてくださって、ありがとうございましたあ〜〜……」


ふらふらしながら頭を下げて、菅生さんの姿を視界の端に捉えた後にドアを開けた。


「刀利サン、おやすみ」


すぐに家の中に入り、ドアを閉めたものだから菅生さんの最後の言葉は夜の闇の中の残像となって消えていった。


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「ねえ涼香、昨日の夜中に外に出たりしてないわよね?」

「へっ……? ど、どうして?」


ちょうど制服に着替え終わり、一階のリビングに降りて来た直後にそんなことを問われ、ドキリと心臓が嫌な音を立てた。

お母さんはそんなわたしの動揺を見逃さないかのように、ギラリと目を光らせた。