「当たり前でしょ。落ち込まない人間なんてこの世にはいないよ」

「そう、なんですね。わたし、今まで菅生さんのことを誤解していたかもしれません」


彼はただプライドが高くて、何にも屈せず、あらゆることを完璧に対処する完璧人間だと思っていた。

だけど、菅生さんもわたしと同じように悩んだり落ち込んだり、悲しんだりするんだ。


「まあ、菅生さんのことは未だによく分かっていないんですが。菅生さん、自分のことは何も教えてくれないし」


いじけたように唇を尖らせてそう言うと、菅生さんは困ったような笑みを浮かべた。わたしの今の発言が菅生さんを困らせた。

わたしはまだまだ幼稚で、大人になるにはまだ早い。


わたしと菅生さんの大きな違いを感じて、わたしは小さく息を吐いた。


目の前を漂う光の粒がだんだんと霞んでいく。

瞼が重たくなって、突然の眠気がわたしを襲った。


菅生さんの肩に寄りかかって、言い表せない安堵の中、深い眠りへと落ちていく。