俺様御曹司は逃がさない

「あらそう。良かったね、説教してくれる“貴重な人材”が居て。あたしが居なかったら、人類史上稀に見る“ドクズ”になってたんじゃない?あんた。あたしに感謝っ……」

「ヘイヘイ、そりゃどーも。なんっでも言うことを聞いてやるよ。特別に、1回くらいなら~」


こいつの“なんっでも言うことを聞いてやるよ”ほど怖いものはない。後で何を請求されるかも分かったもんじゃないからね。

ただほど怖いものはない……それと一緒。


「なら、二度とキスしてくんな?以上です」

「却下~。割に合わん」

「なら、二度とキスマークつけてくんな?以上です」

「却下~。くだらん」


こいつ、あたしの言うことを聞く気なんて更々ないでしょ。


「もういいです」

「なぁんでお前って物ねだったりしねえの?あれ買って~とか、これ買って~とかあんだろ、普通」

「ない」

「ふーーん」


────── そして、あたしのダンスが上達したっていうより、九条のエスコートが上手すぎて、めちゃくちゃ踊りやすかった。


「Shall we dance?」


無駄に色っぽい表情をして、あたしに手を差し伸べて来る九条。


「もう……無駄に色気出すのやめて」

「惚れんなよ?」

「自惚れんなよ?」


こうして無事に舞踏会は幕を閉じた。


「ご苦労さん。お前にしては上出来 ──────」