俺様御曹司は逃がさない

ヤバい……消えない……薄くはなったけど……消えない!!


「あんた、どんな勢いで吸い付いたのよコレ!!」

「俺の吸引力ナメんなよ~」

「ふざけんなっ……っ!?」


背後にフワッと香る九条の香水の匂い。

お腹に九条の手が回ってきて、もう片方の手はあたしの肩をギュッと握った。そして、九条が少し屈んで鏡から居なくなった……と思ったら、背中にチクッと痛みが走る。


「……んっ!?ちょ、馬鹿!!」

「がっつり跡付けてやったわ~」


ヘラヘラしながら満足そうにあたしを見ている九条。


「もぉぉーー!!何してんのよ!!」

「ほら、さっさと行くぞ~」

「ちょ、消してよ!!こんなんじゃいけない!!」

「ハイハイ、我が儘言わないよ~」

「我が儘じゃないわーー!!もういい!!行かない!!」

「拗ねんなよ~」

「拗ねてない!!絶対に行かない!!さようなら!!」


あたしが部屋から出ようとすると、それを阻止する九条。


「どこ行くんだよ」

「どこだっていいでしょ!?」

「この俺がお前を逃がすとでも?」

「……に、逃げる……逃げるし!!別に!!」

「はっ。逃がすわけねえだろ」

「ひゃあっ……!?」


軽々とあたしを持ち上げて、お姫様抱っこをする九条。