俺様御曹司は逃がさない

「やっぱ行かん」

「……は?」

「舞踏会なんて行かん」

「はあ?ちょ、なによ急に」

「あんな野郎共がうじゃうじゃ蔓延ってる所に、なぁんでわざわざお前を連れて行かないといけないわけ?意味分かんねえだろ、普通に」

「いや、あんたが意味分からん。さっさと行くよ?時間ないし」

「チッ。ああ、そうかよ。行きゃあいいんだろ?ったく。お前、俺から片時も離れんな。分かったか?分かったら返事~」

「ハイハイ」

「そうじゃねえだろ」

「御意」


あたしから少し離れて、顔を首元に埋めてきた九条。そして、チクゥゥッ!!とした、結構な痛みを首に感じる。


・・・・・・こいつ、まさかっ!?


あたしは九条を突き飛ばして鏡を確認した。


────── 案の定、がっっつりキスマークが付いている。もはやアザ。


「最っっ低!!あんた何考えてんの!?」


あたしは置いてあったコンシーラーをキスマークに塗りたくって、ファンデーションをベシベシ厚塗りした。


「なんで隠すかなー」

「隠すに決まってんでしょ!?馬鹿なの!?さては馬鹿だな!!」

「俺のモンって跡を消すとか何様だよ、お前」

「あんたが何様よ!!」

「“俺様御曹司”……ってところかな~。いや、“ハイパーイケメン俺様御曹司”……か」

「どーーーーちでもいいわぁぁっ!!」