俺様御曹司は逃がさない

「……く……九条……」

「……っ!!霧島、スピード落として止めろ」

「柊弥……よくやったな」

「お前を運転手に選んで良かったわ」

「泣かせんじゃねーよ」


あたしをギュッと抱き締めて、頭を優しく撫でてくる九条。


「七瀬。悪かったな、怖い思いさせて」

「ううん。平気」

「震えてんぞー」

「うっさい。武者震いだし」

「はっ。やっぱ強ぇなお前」

「……っ、ごめんっ。怖かった……九条……っ、会いたかった……っ」

「珍しく気が合うな。俺も……怖かった。お前に会いたくて、声が聞きたくて、仕方なかったわ」

「あたしもっ……九条にまた会えて……っ、声が聞けてっ……よかったぁぁ……っ」


泣きじゃくるあたしを九条は何も言わず、ただ強く、そして優しく包み込んでくれた。

霧島さんは路肩に車を停めて、気を遣ってくれているのか、外にしばらく居た。


「お前、手首……足首も怪我してんじゃねーか。さっさと言えよ馬鹿が!!血が滲んでっ……」

「そんなことより!!舞踏会!!行かないと!!」

「…………は?」

「いや、『は?』じゃなくて!!行くよ!!早く!!」

「お前……それマジで言ってる?」

「うん。大マジ」


目が点になっている九条。