俺様御曹司は逃がさない

グンッと近付き、ほぼ並走して走っている車。高速道路だから100キロ以上余裕で出てるよね?そんな所であんなにも身を乗り出している九条は……きっとイカれてる。でも、それがあたしの為なんじゃないかって……そう思うと胸がアツくなって苦しい。


「七瀬!!飛べ!!」

「うん!!………って、はあっ!!??」

「飛べ!!」

「む、無理!!」 

「飛べ!!こっちに来い!!」


いやいや、無茶言わないでよ!!こんなところで飛んだら死ぬ、マジで死ぬ!!

九条は車から身を乗り出して、必死にあたしへ手を伸ばしている。


「俺がお前を受け止める、絶対に離さん。死んでも離してやらん。だから、俺を信じて飛べ!!!!」

「お、おいっ!!逃がすな!!」


────── そうだ。簡単なことじゃん。

あたしはただ、無条件に九条を信じればいい。

貴方がいれば、何も怖くない。


「九条っ!!」

「来い、七瀬っ!!」


あたしはもう何も迷わない。

だから、躊躇することなく九条のもとへ飛んだ。


────── そして、しっかりあたしを強く抱き寄せて受け止めてくれた九条は、あたしを守るように抱き締めながら、あたしが飛び付いた反動で後ろへ勢いよく倒れて、ドアにダンッ!!と激しくぶつかった。