俺様御曹司は逃がさない

すると、ブスッと首に何かが刺さった感覚がする。

その方向をチラッと見ると、斜め後ろから銃のような物をあたしに向けている男が立っていた。


・・・・しまった!!


「即効性だ。もう力が入らねーだろ」

「あんたら……九条に殺されても知らないからね」


力が徐々に抜けて、全く動けないわけではないけど、もう力が入らなくて何も使い物にならない。


「拘束を解いて今すぐ手当てをしろ!!急げ!!」

「手当てが完了次第、車で移動する!!」

「ごめん。痛かったよね」


そう言いながら丁寧に手当てをしてくれている男は、声から察するにまだ若い。


「あたし貧乏だけど、こんな道の外れたこと……しようなんて思ったことがないわ」

「……ごめん。でも、どうしても金が必要なんだ」

「人生を棒に振ったとしても?」

「うん」 

「あっそ」


────── 車に揺られて、どれだけ時間が経っただろう。

車に移動させられる時は目隠しされてたから、外の雰囲気とかも分かんなくて、何時頃かっていう推測もできなかった。

時間感覚が狂いすぎてて、もう何日も経ったような気さえしてくる。

・・・・ほんの少しずつだけど、体の感覚が戻ってきたな。

手錠はかけられてるけど、足は何もされていない。

運転席と助手席に一人づつか。いざとなったら脚で応戦……かな。