俺様御曹司は逃がさない



連絡するっつったくせにどうなってんだ?

もう21時すぎてんぞ。

電話かけても出ねーし。


───── にしても、あいつがあんな顔するなんてな。


俺の唇に指を当てて、微笑んでいる七瀬の顔が頭から離れない。

息を呑み、呼吸を忘れるほどあの瞳に引き込まれて、そのまま吸い込まれるんじゃねーかって焦った。

元々見てくれだけは悪くないと思ってたが、本当に綺麗なんだよな……あいつ。

そんなことを思いながら、メッセージ画面をボーッと眺めていると、メッセージが全て既読になった。


《電話ごめーん。今帰ってきた!》

《こんな時間まで何してたんだよ》

《補習とか諸々~。めっちゃ疲れた~》

《馬鹿は大変だな》

《馬鹿じゃないしー。とりあえずお風呂入って寝るね?おやすみ~》


───── 無性に七瀬の声が聞きたい……そう思った。


《風呂上がったら電話して来い》

《元気があったらねー》


で、結局あいつが電話をして来ることはなかった。

ま、慣れないことして疲れてんのは分かってる。あいつの努力も、頑張りも、ちゃんと分かってる。

あいつが自分の為以上に、他人の為に頑張れる奴ってこともな。

あいつは今、自分の為つーより俺の為に頑張ってる。自惚れじゃなく、あいつの隣に居てそう感じる。そんな頑張る必要もねーのにな。