俺様御曹司は逃がさない

「不恰好なダンスですこと」

「あらあら……恥ずかしい。見てられないわ」

「本当に可哀想な人」

「あれで舞踏会に出席なんて……さすがと言うべきかしら。根性が据わってますわね」

「九条様も何を考えていらっしゃるのやら」

「見る目がない……としか言いようが」

「だいたいあの人もあの人でおかしいよな」

「どうしかしてんだよ、あの人も」

「あんな見た目だけしか取り柄のない女を隣に置くなんて、九条の名が廃るわね」


・・・・あたしのことは何を言われたっていいし、構わない。仕方ないって思えるし、割り切れる。

でも、九条のことまで悪く言われるのは気に入らない。無性に腹が立つし癪に障る。


──── でも、その“原因”を作っているのは紛れもなくこの“あたし”だ。


・・・・悔しい。

言い返せないのも、自分の不甲斐なさも、九条の為に何の役にも立てていない自分が……悔しい。

自分の存在を“恥ずかしい”なんて本気で思ったことは無かった。

家が貧乏でそれを酷く言われたこともあった。それで貧乏って恥ずかしいとか、嫌だなって思うことはたくさんあった。

でも、あたし自身の存在を本気で恥じたことなんて一度もない。