俺様御曹司は逃がさない

この言葉が頭の中をグルグルして、どう考えてもクズすぎる言葉なのに、あたしは九条の“特別”なんだという錯覚に陥りそうになる。


──── あなたのその唇は……あたしだけのもの……?


すると、あたしの頬を掴んでいた九条の大きな手が、あたしの口をそっと塞いだ。

ゆっくりあたしに近付いてくる九条のご尊顔。そして、その手の甲にチュッとキスを落とした。


「おら、さっさと行って来い」

「……あ、はい」


ポンッとあたしの背中を押して、ヒラヒラ手を振りながら去って行く九条。

ヒィィィィーーーー!!!!!

なに、なんなの今の!!焦ったぁぁ……死ぬほどドキドキしてるよ、あたしの心臓。


“あいつの存在は心臓に悪い”……これ、教訓だわ。


────── それから怒涛のダンスレッスンの日々。


そもそもヒールなんて履くことなかったし、本当に踊りにくい。


「七瀬さん。足、大丈夫ですか?」

「あーーまぁ、なんとか」

「ちょっと休憩しましょう。飲み物買ってきますね」

「すみません。ありがとうございます」

「いえ。ゆっくり休んでください」


明日かぁ……間に合わないでしょこれ。

それなりの形にはなってるけど……こんなんじゃ……。