俺様御曹司は逃がさない

そんな言い合いをしている今日は文化祭当日なわけで、あたしはどうやらインカムをオンにしていたらしい。


〖七瀬さん。丸聞こえです〗

〖あ、前田先輩……すみません〗

〖九条様とのじゃれ合いはその辺にして、配置に付いてくださいね〗

〖断じてじゃれ合いではありません。了解〗


「んじゃ、せいぜい馬車馬のように働け」


フッと鼻で笑って、目を細めながら小馬鹿にするような態度の九条。


「言われなくても働きますーー」


配置場所へ行く為に、九条へ背を向けて歩き始めた。


「七瀬」


呼ばれて振り向くと、珍しく真剣な面持ちの九条があたしを見つめている。


「お前、結構スーツ似合ってんな。後ろ姿そそられるもんがあるわ」


────── こいつ、真剣な面持ちで何を言ってんの?


「そうですか。ありがとうございます」


あたしは死んだ目で、軽く会釈をしながら中指を立てた。


「その中指をへし折るぞー、しまっとけー。ったく、怪我すんじゃねーぞ。じゃーな」


ヒラヒラ手を振り去っていく九条。


「……なにあれ、うざっ」


あたしは九条に対する日頃の鬱憤や、今朝の出来事のストレス発散をすべく、不審者を徹底的に排除しまくっていた。