俺様御曹司は逃がさない

上杉先輩は素早く立ち上がり走り去った。


「前田~」

「はい」

「悪いけど、こいつらに念のため事情聴取しといてくんねー?」

「承知致しました。人員を増やしても宜しいでしょうか?」

「構わん。好きやってくれ」

「では」


手足が氷のように冷たくて、声が出せなくて、“あれは違う”……そう伝えたいのに、伝えられなくて。

でも、あんな写真見せられたら誰も信じてくれない。信じてくれるはすがない。

・・・・あたしが何を言ったって、もう意味がない。


「戻るぞ~」


九条にそう言われたけど、もう九条の隣に居ることすら許さない気がして……あたしは首を横に振った。


「んだよ。“お姫様抱っこしてくんなきゃ嫌!”的なやつ~?我が儘だね~、サーバントの分際で」

「ひゃいっ……!?」


あたしを掬い上げるように軽々とお姫様抱っこをする九条に、何故か館内は拍手喝采でカオスすぎた。


「あの……」

「ん?」

「怒ってる……よね」

「なにが」

「色々と」

「まぁね」

「ごめっ……」

「なんですぐ言わなかった」


あたしを抱えながら真っ直ぐ前向いて、怒るわけでも、優しいわけでもない。

責め立てるようなこともしない……そんなトーン。