俺様御曹司は逃がさない

「はぁん?春のスペシャルドラマぁ?」

「はい。どうしても柊弥様を起用したい……とのオファーを受けてまして」

「んなもん出るわけないだろ……興味ねえーし。適当に断っとけよ~」

「お相手が柊弥様をご指名しているようでして」

「あ?誰だよ。この俺にそんなくだらねーけどさせようとしてるクソ馬鹿は」

「お相手は椿川グループのご令嬢だそうです」


なるほど?だから俺に話を振ってきたわけか。

おかしいと思ったんだよね~。

ドラマだのなんだのには死んでも出ないから、俺に通さず断れって霧島には言ってある。

基本、この手の話を俺に持ってくる前に霧島が処理するはずだ。

なのに、わざわざ俺に話してきたってことは……そういうことだろ?

・・・・・・椿川グループか。

そこそこデケェよな。


「で?恩を売っときゃ後々よくね?的なやつだろ。つーか、俺を指名してるっつーことは相手側も何かしら“理由”があんじゃねーの?」

「詳しくは私にも分かりません。それに、このタイミングだったら、こちら側にもメリットはあるかと」


そう言いながら俺に差し出して来たのは、何も書かれていない茶封筒。


「あ?なんだこれ」

「昨日の郵便物に紛れておりました」