俺様御曹司は逃がさない

それから拓人ん家にお邪魔して、子猫の事情を説明すると快くお出迎えしてくれた。

おばさんもおじさんも大喜びで、既にデレデレ状態だった。


「じゃ、母さん。梨花のこと頼むわ」

「はいは~い」


おばさんが子猫用のミルクを買いに行くついでに、そっち方面の梨花を送っていくことに。

あたしはいいって言ったのに、拓人が送っていくの一点張りで送ってもらうことに。


「舞」

「ん?」

「何かあった?」

「え?」

「いつもと様子が違うから」


・・・・言えるわけがない。

好きでもない人と、記憶はないけど体を重ねていた……なんて言えるはずがない。


「ううん。何もないよ?ちょっと疲れてるだけ~」

「……あいつには言えんの?」

「ん?」

「あいつには言えて、俺には言えない?」


拓人を見ると、辛そうな表情をしてあたしを見ていた。


「……拓……人?」

「舞さ、あいつと関わり始めてから変わったよね。なんつーかさ、どんどん遠ざかって行く気がする。俺、舞のことずっと見てきた。誰よりも長く、誰よりも近くで。なのに……なんで遠ざかってんだ」

「拓人……?」


妙な胸騒ぎがする。

ザワザワして落ち着かない。


「俺、舞のこと…………家族だと思ってる」


スーーッと胸のザワつきが消えていく。