俺様御曹司は逃がさない

あたしはあの過ちを少しでも無かったことにしたくて、消したくて、何か良いことをしたい……そう思っているだけなのかもしれない。

この猫を助ける行為はただの……偽善なのかもしれない。

動物病院の前に着いて、あたしの歩みは止まった。

蓮様の言っていた通り、この子猫にとって何が幸せなのか……あたしに拾われたことで不幸にしてしまうのではないか……あたしの選択が正しいのか……この子猫にとっての幸せとは……。

・・・・あたしは今、無責任なことをしているのかな。

そう思ったら漠然とした不安に押し潰されそうになる。


「ごめんね。ちょっと待っててね……」


命の重みを直で感じる。あたしの腕の中にいる、この小さな子猫の重みが何よりも重く感じた。


「舞?」

「やっほ~、舞。何してんの、こんなところで」


振り向くと、そこに居たのは梨花と拓人だった。

2人を見た瞬間、どっと涙が溢れて流れ出す。


「は!?ちょっ、どうしたの!?拓人!!あんた舞に何かしたでしょ!!」

「いやっ、してねーよ!!って、おいおい。舞、引っ掻き傷だらけじゃん!!」

「私そこの薬局で消毒とか買って来るから!!」


梨花は走って薬局へ向かった。