俺様御曹司は逃がさない

「お礼だなんて……あたしは当たり前のことをしたまでです。お怪我がなくて本当に良かったです」

「……あ、ありがとう。貴女の声……ちゃんと届いたわ」

「ははっ。それは良かった」

「フンッ。貧乏人は恥も何もないからかしら?本当に良く通る声よね~。信じらんないわ~」

「こら、凛」 

「もうっ、分かってる!!じゃーね!!」


ぷんすかしながら去っていく凛様。

すると、あたしに背は向けているものの、ヒラヒラっと手を振ってきた。


「あれが俗に言うツンデレ……なのかな?」


少しだけ、ほんの少しだけ凛様との距離が縮まったような気がした。


「さてと……」


あたしは凛様が救いたかった小さな命を救い上げるべく、血眼になって探し回った。


「シャーー!!」

「大丈夫だよ……怖くないからね」


ゆっくり抱き上げると……見事に引っ掻かれた。


「シャーー!!シャーー!!」

「こんだけ元気があれば大丈夫そうだけど、一応病院へ行こっか」


逃がさないよう、どれだけ引っ掻かれようが絶対に手を離すことはしなかった。


「ボロ屋だし、4人姉弟だし、お父さん無職だし……でも、みんなアレルギーも無いから、家族が増えても問題ないし……ウチへおいでよ」