俺様御曹司は逃がさない

「そんな汚い手で私に触れないでくださる!?」

「嫌っ!!」


・・・・声は微かに聞こえてくるのに、なかなかその姿を人混みの中から見つけ出せない。

ダメだ。目視なんて埒が明かない。

あたしは大きく息を吸った。


「りーーーーーんっ!!!!!」


人混みの中で、そんじょそこらの応援団には引けを取らないほどの大声を出すあたしに、周りの動きがガチッと止まって、ほんの少しだけ静かになった。


「舞っ!!!!」


あたしの声がちゃんと届いた。

・・・・こっちか。

あたしは名前を呼ばれた方へ急ぐ。


「あれか!!」


あたしの視界に入ったのは、ちょっとした路地裏で凛様が車へ連れ込まれそうになっていた。

あたしはそのまま走るスピードを上げて、凛様を押し込もうとしている奴に飛び蹴りを食らわせた。

素早く凛様を後ろに下げて、車から降りてきた奴には鞄をブン回して、その勢いで殴り飛ばす。


「……っ、テメェ……」

「この御方に触れることは許しません。あの、もう少し下がっててもらえますか。やりづらいんで」

「あ、うん」


すんなり下がってくれた凛様。普段なら文句の1つや2つ、言ってもおかしくなさそうだけど。