俺様御曹司は逃がさない

あのキスに意味も、理由も何もない。

気にするだけ無駄。そう、無駄!!


「はぁ~あ。これだからクズは困っちゃうね~。そろそろ落ち着いたら?霧島さん泣いちゃうよー。“そんな子に育てた覚えはありません!”って」


・・・・ま、霧島さんも怪しいっちゃ怪しいけどね。あの巨乳お姉さん、彼女って感じじゃなかったし~。にしても、あの時の霧島さん……大人の色気ムンムンすぎてヤバかったな。

そんなことを考えながら歩いていると、隣に九条が居ないことに気が付いた。


「え?あれ……って、ちょっと……何してんのー?」


後ろへ振り向くと緩やかな風が吹いて、ただ突っ立っている九条の綺麗な髪がゆらゆら揺れた。

少しうつ向いていた顔をゆっくりと上げて、あたしを真っ直ぐ見据えてくる。

その瞳から目を逸らすことができない……というか、逸らすことが許されない。


──── 九条の瞳が、あたしを捉えて逃がさない。


「────── ない」

「え?」

「誰でもいいわけじゃない」

「はあ?いや、だってっ……」

「二度は言わない」

「は?」

「キスをしたいと思えるのは、後にも先にも七瀬…………お前だけだ」


ドクンッ……ドクンッ、ドクンッ……と高鳴る胸の鼓動。


────── いや、ちょっと待て。