俺様御曹司は逃がさない

「なにがー?謝罪して欲しいことが山ほどありすぎて、何に対しての謝罪なのか分かんないわー」

「お前、マジでうざいわ」

「それはお互い様でしょ」


隣にいる九条をチラッと見上げると、ばつが悪そうな顔をしていた。


「なによ」

「……あん時、あんなことをするつもりも、お前を怖がらせるつもりもなかった……悪かったな」


ただ前を真っ直ぐ向いて、ポケットに手を突っ込みながら歩いている九条。

ま、あの九条が反省してる……ってことでいいんだよね?こいつが反省なんてすること滅多にないだろうし、一応あたしのことを考えてたってことだろうし……許してやらんこともない。


「もういいよ」

「……なんか欲しいもんとかねーのかよ」

「はあ?なにそれ。償いのつもりー?」

「お前にだったら“償い”とやらをしてやってもいい」


償い……ねえ。


「苺……苺を謹呈しなさい」

「は?苺ぉ?そんなんでいいのかよ」

「うん。苺って高いから自分で買おうってなかなか思えないし、苺が食べたい」


「はっ。そうかよ」

「それで許してあげる」

「そりゃどーも」


あたしがたまたまあの場にいて、あのキスの相手がたまたまあたしになっただけ。