俺様御曹司は逃がさない

「頭を上げない。前代未聞ではあるが、君の行動力には驚かされたよ。君は素敵なサーバントだ。これからも息子のことをよろしく頼む。柊弥、この子は大切にしてあげなさい」

「あ?何を今さら。俺のサーバントっつ~時点で、こいつは勝ち組だし、幸せに決まってんだろ?」

「これだからお前って奴は……」

「随分と頭の中がお花畑ですこと」

「あ?お前」
 
「いててっ!!」


握り拳で頭をグリグリされながら、フェイドアウトしていくあたし。

外に出るなりポーイッと捨てられて、あたしをそのまま放置して歩き始めた九条。

そんなあたしの元へ来たのは霧島さんだった。


「先ほどは失礼致しました」

「いえ。あたしの為だったってこと……分かってますから」


霧島さんの手を取ろうとした時、ベチンッとその手を払われて、腕をガシッと掴まれるとそのまま引っ張り上げられた。


「ったく、手間かけさせんな」

「そりゃすんませんでしたー」


離れまで無言で歩くあたし達。

いつの間にやら霧島さんは居なくなっていた。


「七瀬」

「なに」

「悪かった」


九条が謝って来るなんて珍しい。

しかも、ふざけた様子もないし……。