俺様御曹司は逃がさない

あたしはナチュラルに嘘をついて、何食わぬ顔で拳銃を受け取って、内心“こえぇぇーー!!”とか思いながらも、拳銃を持ったまま猛ダッシュした。


「ごらぁぁぁぁ!!」

「その娘を逃がすな!!」

「何を手こずっている!!」

「拳銃を盗まれただと!?」


後方で怒号が飛び交っている。

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!

めっちゃ大事になってるってーー!!

そして、あたしの目の前に現れたのは長谷川さんだった。


「はぁぁ。何をしているのですか」

「すみません。どうしても話がしたくて」


すると、一瞬で拳銃を奪われて、取り押さえられた。


「邦一様のお気に入りなので、あまり手荒な真似はしたくないのですが」

「だったら離してくださいよ」

「前代未聞ですよ。分かってますか?」

「もう上等っすわ。この際なんでも」


取り押さえられた……とは言っても、向き合ってあたしの両手を握っているだけ。

ま、この握られている手を動かすのは無理だけど。だってビクともしない。

あたしは躊躇することなく上段回し蹴りを長谷川さんに極めた。


「おっと……こりゃ驚いた」


咄嗟に受け身を取った長谷川さんは、あたしから手を離した。