俺様御曹司は逃がさない

霧島さんは圧倒的九条(柊弥)派閥だからな~。

きっと聞き入れてくれないだろうけど、一応聞いてみようかな。


「九条のお父さんにっ……」

「その件に関しては私に出来ることはありません」


ま、そうなりますよねーー。


「ですが……今から私が言うことは“ただの独り言”なので、どうかお気になさらず」


きっと何かしらの情報をあたしに伝えてくれるはず。霧島さんって本当に出来た人だ……って、あたしが偉そうに言える立場ではないけど。


「旦那様は柊弥様のことも……そして、七瀬様のことも考えて反対しておられるのです。七瀬様のことを“庶民だから気に入らない”……など、そんな浅はかな理由で否定をされる御方ではありません。旦那様にはかつて、一般の方でとても仲の良い幼馴染みが居たそうですよ」


・・・・“かつて”……この言葉が引っ掛かる。

もう、いない……ということ?


「そして……還らぬ人となったそうです。あなた達にはそうなって欲しくない……そういうことでしょう。旦那様なりの優しさです」


あたしには何故そうなってしまったのかが、すんなり分かってしまった。

それはあたしが、その幼馴染みさんと同じ立場だから。

これはあたしの推測でしかないけど、おそらくその幼馴染みさんは九条のお父さんのサーバントだったんだと思う。