俺様御曹司は逃がさない

『……俺はお前のこと、他の女と一緒にしたことも、他の女と変わんねぇな……なんて思ったことも、一度だってねえよ。……悪かったな、連れ呼んで来るから待ってろ』


あの時の九条……どこか悔しそうで、もどかしそうで、悲痛な叫びが表情に出ていた。

声に出さずとも、すべて表情に出ていたからこそ……あたしは反応に戸惑ったし、何て言えば良かったのかも分からなかった。

九条が何を考えて、何を思っているか……あたしには全く分からない。

九条にとってあたしは、“ただの暇潰しのおもちゃ”……じゃなかったの?


「柊弥様と喧嘩でもしましたか?」

「いや、喧嘩っていうか……喧嘩ではない……です」

「あまり干渉をするつもりはないですが、早く仲直りしていただけると助かります。最近少々荒れておりまして……色々と」


ルームミラーに映る霧島さんの表情は、困ったような、呆れているような……そんな感じだった。

あいつが荒れている=喧嘩か、女遊びか、親子関係の悪化か……どれもあり得る。

親子関係は正直あたしにも非があるというか、そもそもあたしが九条のサーバントになったことが原因で揉めてるっぽいし、どうにかしなきゃって思うんだけど、九条がそれを許さないっていうか、『もう二度とあいつとは会わせない』とか言って激オコだし。