────── あれから九条に会うことも、連絡を取り合うこともなかった。
結局、煌と海に行くって約束したのに、海を想像するだけで九条のと出来事を思い出しちゃって、胸がドキドキバクバクして息苦しくなっちゃうから、プールに変更してもらって、申し訳無いことしちゃったなって罪悪感に駆られながら、あっという間に夏季休暇が終わった。
「おはようございます。七瀬様……って、風邪ですか?」
「おはようございます。いえ、大丈夫です」
「なら何故マスクを?」
「え、あ……えっと、喉が少しイガイガするので」
「そうですか。では、発進しますね」
「よろしくお願いします」
“キスに警戒してマスクをしています”……なんていえるはずがない。
・・・・九条とのキスがめちゃくちゃ嫌だった……わけではない。良かったわけでもないし、不本意でしかなかったけど、別に不快とかそういうのではなかった。
ただ、普通のキスすらまともにしたことのないあたしが、いきなりあんなハードなキスされたら、ビックリするしパニックになるでしょ。
九条が餓えた獣みたいに、喰らい付いて離してくれなくて、どうすればいいのか全然分からなくて。