俺様御曹司は逃がさない

そんな九条が少し怖かったのと……自分が自分じゃなくなっちゃう感覚っていうか、九条とのキスが甘くて、蕩けちゃいそうで……それがとても怖かった。

なにより、こんなキスを他の人にも当たり前のようにしていると思うと、胸が……ギュッとして苦しかった。

九条の周りにいる人達には失礼だけど、あたしも所詮はそんじょそこらの女と同等に扱われてるんだなって思ってしまった。

特別なら、あんなところでいきなり……というか、強引にキスしたりなんてしないでしょ。

九条のことだから、“ちょっと血迷ったわ~”とか“ああ~、なぁんか軽くムラムラしちゃって~”とか、そんな感じで済ますだろう。

それがどうしようもなく腹立つけど、所詮はクズ……と思うしかない。


・・・・はぁぁ。


あの時、『あんたの顔なんてもう見たくない!!』とか言っちゃったもんなぁ。

あたしがそう言った時、九条がとても切ない表情をしたのが今でも忘れられない。

傷付けちゃった……よね。

ぶっちゃけ今日会うのが気まずい。


「霧島さん」

「はい」

「九条……元気でしたか?」

「どうでしょう。心なしか落ち込んでいるようにも見えましたね」

「そう……ですか……」