俺様御曹司は逃がさない

スマホを取り出して霧島に電話をかけた。


〖はい〗

〖車回せ〗

〖もう帰られるのですか?〗

〖なんだっていいだろ。さっさと回せ〗

〖承知致しました〗


電話を切って、スマホをギュッと力強く握った。


「まずったよぁ……さすがに」


つーか、キスの1つや2つで何でこうも悩まなきゃいけねえんだよ。

むしろ、俺にキスされるとかラッキーでしょ。嫌だと思う女なんて、あいつくらいしか居らん。あいつがおかしいんだよ。


・・・・綺麗な瞳に滲む涙、溢れてポロポロと頬を伝っていく涙。そして、苦しそうに声を張り上げて、俺を咎めるような……そんな声と目をしていた。


「……俺だって誰でもいいわけじゃないっつーの」


キスなんてしたいと思うことも無かった。

どう考えても不要だろ、キスという行為なんて。

つーか、適当に抱く女と唇を重ねて、絡め合うなんざマジで無理。

だから俺は、キスなんてしたことが無かったし、させたことも無かった。

ま、この前事故って咲良とはしちまったけど、あれはノーカンでしょ。


・・・・そんな俺が初めて“キスをしたい”……そう思ったのが七瀬だった。

何でか分かんねえけど、七瀬とならしたいと思える。むしろ、させてくんねーかな?とかしょっちゅう考えてる自分がキモすぎて吐き気。