俺様御曹司は逃がさない

俺が立ち上がったと同時に、七瀬がスッ飛んできた。

 
「くっ、九条……落ち着いて……ね?」


小声でそう言うと、俺の胸元を軽くペチペチ叩きながら、これまた小声で『ドードー』と言っている七瀬。

つーか、お前も誰に向かって『ドードー』言ってんだよ。


「近くで見たら大したことないですね。もっと身長高いかな?と思ってたんですけど」

「ん?なんて?」

「ドードー!!」

「ちょ、真広君!?失礼だよ!!」


このクソ陰キャ……身長だけは無駄に高ぇな。俺より数センチ上ってところか。ま、そんなひょろい体で俺に勝とうなんざ幾億年早いっての。


「確かにイケメンではあるけど……僕の美玖ちゃんには釣り合わないかな」

「ああ、君……美玖ちゃんの彼氏君?いやぁ、男の嫉妬ほど醜いものはないよ?気をつけたらどうかな」

「はい?」

「ドードー!!」

「真広君!!」


こんなクソ陰キャが俺に楯突くなんてな。ま……そんだけこの女のことが大切ってことか。


「九条っ!!カモンッ!!」


さっきからずっと謎に小声な七瀬に引っ張られて、建物の裏に連れていかれた。


「九条」

「あ?」

「……よ~く耐えた~。褒めてつかわす」