俺様御曹司は逃がさない

────── そんなクッサいセリフ言われたっけ?


「そんなこと言われた覚えないけど」

「だな。言った覚えねーわ」

「なにそれ。じゃーね」


何となく手を振ってしまった。

九条に手を振るなんて初めてかもしれない。

すると、手を振り返すことなくすぐ窓を閉めた九条にイラッとした。

そして、走り去る車を見届ける。


「ふぅーー。オールきっつ……」


今にも壊れそうな門扉に手をかけてると、家の中からドタバタと騒音が聞こえる。

そして、壊れそうな勢いで玄関のドアが開いた。


「舞!!」


この数時間で何が起きたの?ってくらい、げっそりしたお父さんが涙と鼻水を垂らしながら、あたしに抱き付こうとしてきたから、反射的にひょいっと躱して、お父さんはそのままズッ転けた。


「汚いからやめて」

「舞ぃぃ~、ごめんなぁぁ。こんな父親でごめんなぁぁ。お願いだから家出だけは勘弁してくれぇぇ。生きた心地がしねぇからぁぁ」

「……ごめんね、お父さん。あたし酷いこと言った……本当にごめんなさい。あたし、お父さんとお母さんの子に生まれてきて良かったって、心の底から思ってるし、そう言える。ぶっちけ勘弁してくれよって思うし、なんでうちだけ?とか思うし、働けよって思うし、いい加減にしろよって思うし、ちゃらんぽらんにも程があるでしょって思うしっ……」