俺様御曹司は逃がさない

結局、七瀬が全部いちごを平らげた。


「で、なんであんな所に居たんだよ」


夜遊びするタイプでもねぇだろ。男遊びなんて尚更ないわな。


「……喧嘩しちゃって」

「あ?喧嘩ぁ?誰とだよ」

「お父さん……っていうか、お母さんっていうか……」


ああ、もしかしてあの事か?


「七瀬っ……」

「ごめんなさい」


立ち上がって俺に深々と頭を下げた七瀬。別に俺は、お前に頭を下げてほしいわけじゃない。


「迷惑かけてごめんなさい」

「頭上げろ」

「本当にっ……」

「お前、何か勘違いしてね?俺は偽善者じゃないんでね。自分の利益になるか、ならないかで動いてんの。お前の父親の小説……結構面白いって知ってたー?俺、あれはいつか売れるって思ってんだよね~。ここで潰せさせるのは勿体ねーなって思っただけ。要は“投資”と変わらん。仮に売れなかったとしても、俺の暇潰しにあの人が書いた小説が役に立つのなら、それだけで金を払う価値があるっつーこと」


うつ向いて、むせび泣く七瀬。

こいつ、父親になんか言っちまったんだろうな。

ま、あの父親だからなぁ。ヘラヘラしてたんだろうけど。


「なぁ。あの人が小説書き続けてる理由……知ってるか?」


首を横に振った七瀬。

ま、言わないか。でも、これは言っといた方がいいだろ、どう考えても。