俺様御曹司は逃がさない

「承知致しました」



──── で、嫌な予感が的中して今に至るってわけ。



「つーか。なんであんな場所に居たんだよ、お前」


俺はムシャクシャして適当な女を抱いてた……とはいちいち言わねえけど。そのムシャクシャしてた原因がお前だってこともな。


「……迷子」

「はあ?迷子?」

「うん」

「いや、意味分からん」

「ごめん」

「なんだよ……お前」


急に切ない表情を浮かべて、何か思い詰めているような雰囲気。

・・・・はぁぁ。

なんでこの俺が女のご機嫌取りなんざしなきゃいけねえんだよ……。


「ごめん……」

「まぁ、とりあえず来いよ」


トボトボ歩く七瀬に合わせて歩く俺。

らしくない七瀬に、らしくない俺。

普通なら居心地悪いはずなんだけど、こいつとはそうでもないっつーか、むしろ気になる方が上回るっつーか。

部屋に着いて、真っ先に冷蔵庫から取り出したのは、七瀬弟から聞いた七瀬の好物……いちご。


「食え」

「え?」

「いちご……好きなんだろ?」

「あ、うん……好き」


何故か俺を見つめながらそう言った七瀬に、不覚にもドキッとさせられた。マジで気に入らん。


「全部食え。俺は要らん」