俺様御曹司は逃がさない

『誰かっ……』


気のせい……とは思えねえ。

俺が聞き間違えるはずがねーだろ。

こちとら常にあいつの声を聞いてんだよ。

サングラスをずらして目を凝らした。絶対にあいつが居る。


────── “九条”


あいつが俺を呼んだ気がした。


「──── けた」

「はい?」

「見つけた」

「ちょ……!?」


男に囲まれて、必死に抵抗している七瀬。

そんな七瀬が今にもホテルに連れ込まれそうになっているのを見て、全身の血が沸騰するように熱くなって、一気に血が上った。

・・・・殺す。俺のモンに手を出した奴は絶対に殺す。

七瀬の背後から男と引き離すと、俺だとはまだ認識していないはずの七瀬が、俺だと分かっているように七瀬を抱き寄せた腕をギュッと握ってきた。

そして、俺を見上げる七瀬は安堵の表情を浮かべ、大きな瞳からは涙が溢れそうになっていた。

ぎゅっと下唇を噛み締めて、その涙が溢れないように耐えている七瀬が無性に愛おしく思えた。

いや、愛おしいって何だ?よく分からん。


とりあえず頑張ったってことで、頭でも撫でといてやるか……とか、何かしら理由や言い訳を作って七瀬に触れる。

このまま俺の腕の中に居ればいいのに……そう思った。