俺様御曹司は逃がさない

・・・・・・そっか。なるほどね。


九条がお父さんと仲違いしている原因は……“あたし”だ。

九条の為を思うなら、あたしはサーバントを辞めるべき?


────── いや、九条はそれを絶対に許さない。


「申し訳ございません。お言葉ですが、あたしの一存では決めかねます。あたしは柊弥様のサーバントです。柊弥様以外の御方に命令をされても、すぐに首を縦にも横にも振れません。あたしは柊弥様の判断に身を委ねます」

「ほう。じゃあ……これでどうかな?」


ボンッ!!と机の上に置かれたアタッシュケース。

九条のお父さんがパカッと開けると、そこに入っていたのは札束だった。


「なん……ですか……これ」

「金が欲しいんだろ?あげるよ。柊弥のサーバントを辞退すると、この場で約束をしてくれるのなら、これの倍支払おう。どうだ?悪くない話だろ?どうせ金目当てでっ……」

「要りません。お金が欲しくて柊弥様と関わっているわけではないので」

「じゃあ何が目的だ」

「目的なんてありません」

「……ククッ……ハッハッハッ!!これだから貧乏人は怖いよなぁ~。演技が上手い上手い!!今までもそうやって男から金を巻き上げてきたのか?調べさせてもらったけど、君の父親も母親も相当な馬鹿。そんな馬鹿を見て育った子はあんな風になりたくないって、ちったーマシになるもんなのか?簡単に人を信じて騙されて、それを健気に支える……ほんっとうに惨めな両親を持って、心底哀れに思うよ。君のこっ……」