俺様御曹司は逃がさない

「あたしタクシー拾います。霧島さんは九条のところへ行ってください。こんな時間にホテル街で何かあったら……ヤバくないですか」

「大概のことは揉み消せるので心配は無用です」

「今のご時世、何がどう転ぶか分かりませんよ。九条の勘の良さとか洞察力とか諸々、人間離れしてるし、うまいことやれるタイプなのは分かってるけど……」

「すみません。正直私も今回は気が気じゃないです。なんて言っても七瀬様が絡んでいるから……やりすぎないか心配ではありますね」

「戻ってください」

「いや、でも」

「あたしなら全然平気なんで。九条の方が断然ヤバい案件でしかないから、さっさと止めてくださいね」

「すぐタクシーを拾ってください。九条家に通れるよう、私が連絡を入れておきますので」

「ありがとうございます。じゃ」


車から降りて、タクシーを拾おうと思ったけど……いや、タクシーに乗るなんて贅沢をしてる場合じゃないよね、家の現状的に。

冷静になって、罪悪感に押し潰されそうになる。

そう遠くはないし、あたしはトボトボ歩きながら九条家に向かうことにした。


「拓人にも九条にも謝んなきゃ……」


・・・・お父さんにも……。


「小娘。こんな時間に何をしておる」

「へ?」