俺様御曹司は逃がさない

言えない……かな。

咲良ちゃんのことを考えると、黙っておいてあげた方がいいよね。というか、何をしようが本人達の自由だし、あたしが返事を待たずに入っちゃったのがそもそもの問題。


「お昼食べた後に体術強化訓練なんて、本当にえげつないですよね。さすがに気持ち悪くなっちゃいました。これからお昼控えめにしないと~、ははっ」

「そうですか。なら、胃薬を用意しますね」

「かたじけない」

「変わった人ですね、本当に」


そう言うとあたしに優しく微笑む前田先輩。あたしが男だったら絶対に放っておかないな。


「七瀬さん」

「はい」

「すみません。胃薬を切らしているようなので、買ってきますね」

「え、いや、いいです!!わざわざそんな」

「すぐそこに薬局があるので」


・・・・天下の天馬学園。敷地内に無いものは無いと言っても過言ではない。


「すみません……」

「少々お待ちください」


誰もいない、何の音もしない、不慣れなベッドの上にポツンッと寝ているあたし。

それが無性に寂しくて、少し怖い。


しばらくして、バンッ!と医務室のドアが開いた音がした。

前田先輩にしては随分と荒々しい……ということは、他の誰かだろう。