「咲良!!お願い!!ママを助けると思って!!」
「でもママ……私ね?好きな人っ……」
「ママ、今の生活ができなくなったら死んじゃう!!」
ママはパパの為に綺麗で在ること、そして綺麗な物、可愛い物がとても大切な人で、パパもママのことが大好きだった。
別にパパは“ママそのもの”が好きなだけなのに、ママはそれに気付いていない。
もっと、もっとってエスカレートしていく。
それが決して悪いことだとは思わない。
いつまでも好きな人の為に綺麗で在りたい、可愛く在りたいって、とっても素敵なことだと思うの。
経営が一時的に右肩下がりになるとこは無くはない話だし、ちゃんと立て直せる技量も何もかも叶家は備えている。
でも、ママは過剰に反応して恐れちゃうの。
パパの為に自分自身に投資できるお金が無くなっちゃうことをね。
今回、今までにない右肩下がりが起きて、ママが正常な判断がつかないほど狂ってしまった。
「咲良……お願い……」
私に泣き縋るママを……見捨てることができなかった。
同じ女だから、好きな人の為に頑張ってるママのことをパパに相談することさえ、私にはできなかった。
私は好きな人に想いを伝えることもなく、無かったことにして帰国した。
ママの安泰を求め、九条家に嫁ぐ為に……。
舞ちゃんにも、柊弥にも申し訳ないとは思ってる。
でも、ママの泣き縋るあの姿が頭から離れないの。
「あれ、そろそろ使って良いんじゃないですか?タイミング的に今日でしょ。あの人達、どうせ今頃ドチ喧嘩してるだろうし、絶好のチャンスだと思いますけど」
「……うん」
「俺も上手いことやるんで、そっちも頼みますよ」
「わかった」
ごめんね、柊弥……舞ちゃん。
私はやっぱ、ママを見捨てることはできない。



