俺様御曹司は逃がさない

至ってシンプルな話だ。

困った時、弱者は強者を頼ればいい……これは自然の原理。

それをしないのは、できないのは、ただ己の弱さでしかない。

俺は圧倒的“強者”の立場に立ち、“弱者”の言動も行動も理解できねえし、理解したいとも思わん。

ただ、仲間内となれば話は別だ。

理解はできねーし、理解したいとも思わない……でも、助けてやることはできる。

俺から手を差し伸べることはしない。

助けを求めてくるのなら、頼ってくるのなら、俺はその伸ばした手を掴んで、ただ引っ張り上げてやるだけ。

グダグダ御託を並べ、それをちっぽけなプライドが許さず、勝手に落ちていった奴の言い訳なんざ聞く耳を持つ必要がない。


────── 上杉は、それをできる奴だった。


マスターの為に、上杉家に生まれた者として、より良いサーバントになる為に。

全サーバントの質を向上させる為だったら、プライドも何もかも捨てられる奴だった。

年下の俺に何の躊躇もなく頭を下げて、頼み事も助けを求めることもできる奴。


「……あっそ。もうあんたとは分かり合えない」


────── 例外はない……はずだった。


七瀬が助けを求めようが求めまいが、俺は自ら手を差し伸べてしまう。


・・・・俺の中で、何かが確実にブレ始めているのは、もうとっくに気付いていた。