俺様御曹司は逃がさない

・・・・て、何を聞いちゃってるの?あたし。こんな不毛なこと聞く必要ないじゃん。自分が何を考えているのか、よく分からなくなってきた。


「あれ、事故だから」

「は?」

「だぁから、お前が見たやつは事故だっつってんの」


かくかくしかじか。

九条の言い分……というか、九条の説明を簡潔にまとめると、あの場所でたまたま咲良ちゃんに遭遇。で、咲良ちゃんが走って九条のもとへ行く。そして、足がもつれた咲良ちゃんがズッ転けそうになりながら九条の胸元を掴んで、その勢いでグイッとされた九条は必然的に屈む形になり、ゴチッと唇が当たった……というわけらしい。


・・・・少女漫画かっ!!とツッコミたい気持ちを抑えた。


「つーかお前、なんであんな所通ったわけ?」

「なんでって……近道って言われて」

「誰にだよ」

「……宗次郎君」


すると、あたしを真顔で追い詰めて来る九条。もちろん後退りをするあたし。


「あ、あのっ……」


トンッ……と背中に当たったのは壁。

壁に手をドンッと付ける九条。これは紛れもなく壁ドン。


「七瀬」

「は、はいっ」


あたしを見下ろしている九条の目が、獲物を狩る肉食動物みたいに鋭い眼光をしている。

あたしはこのまま喰われるのだろうか。