俺様御曹司は逃がさない

煙草を吹かしながら、ハンドルを握って九条に向かう。


「……はぁぁ。俺のこと許してくれっかねぇ……あの懐のちっせぇクソガキ」


だいたい理不尽にもほどがあんだろ。俺、なんっもしてねぇーし。俺が謝る意味が分かんねーもんな、そもそも。


「ま、あいつの理不尽なんて今に始まったことじゃねーけど」


・・・・何より七瀬ちゃんにとんずらこかれるのが一番厄介だからな。それこそ柊弥が荒れ狂う。


──── 穏便に済むことを願いますか。


「あら~、霧島じゃない。おかえりなさ~い」


いや、俺が帰ってくんの知ってたでしょ、あんたは。


「ただいま戻りました。七瀬様と随分仲が深まっているようで」

「フフ。もう舞ちゃんが可愛くって~。頼まれたら何でもしちゃうわ~」

「程々にしてくださいよ」

「はいはい。あ、今日雑誌の撮影か何かが急遽入ったって、さっき榎本さんが言ってたわよ?もうそろそろ現場に行っちゃうと思うから」

「いってきます」

「いってらっしゃい。舞ちゃんの為にも仲直りするのよ~」

「善処します」


足早に離れへ向かった。

・・・・柊弥の部屋の前。

柄にもなく緊張する。

深呼吸をして、ノックをしようと手を伸ばした時だった。