俺様御曹司は逃がさない

俺は“役目”をもらった……こんなガキんちょに。

いや、俺はこのガキんちょに……“生きる意味・理由・居場所”を与えられたんだ。

そう思ったら、自然と頭を下げていた。


「承知いたしました」


────── 俺は、こいつの為だけに生きよう。


・・・・俺と柊弥が出会った頃、企業の拡大、グローバル化……九条財閥は大忙しだった。

柊弥の両親は全国、海外を飛び回る日々。

幼稚園の行事、そして小学校の行事、全て俺が参加した。

柊弥は俺以上にそつなく器用に何事も完璧にこなしてしまう、死ぬほど可愛げのないガキだった。

まだまだ両親がいないと寂しい年頃なはずなのに、弱みを見せることも、弱音を吐くことも一切しなかった。ま、可愛げのないガキだわな。

────── 寂しい。

たったその一言が言えないなんて、金持ちもなかなか残酷だ。

そんな中、年に1度の大行事……運動会だけは柊弥の両親も都合をつけて、毎年参加をしていた。

口ではアレコレ言ってても俺には分かる。

柊弥は年に1度のこの日が……一番嬉しそうで楽しそうだった。

あれは確か……小3の時だったかな。

運動会当日に会社のトラブルで柊弥の両親が来れなくなった。