俺様御曹司は逃がさない

俺は一体、誰なんだ?

あれ、俺の名前って……なんだっけ?

何度も何度も、自分の名前すら忘れそうになるほど、落ちるところまで落ちていた。


・・・・死んだ方が幾分マシだ。

そんな時、俺を拾ってくれたのが九条財閥の会長 九条 邦一。


────── 10年前、俺が15歳だった頃。

数十人を一気に1人で相手をして、全員のしたのはいいが動けないほどの怪我と疲労でぶっ倒れていた。

そこへやって来たのが邦一さんだった。


「死んだか?若人よ。つまらん顔をしておるな。死に絶えた方が報われる……といった塩梅か?」

「あ?んだよ……クソジジイ。てめぇが死ね」

「生きる意味、生きる理由が欲しい……と言った顔にも見えるか」

「……っ、あ?さっさと失せろ……殺すぞ」

「はっはっはっ!!威勢だけは一丁前じゃな。もう動けんだろ。来るか?九条に。くれてやろう、ワシの孫を。但し……万が一、ワシの大切な者達に手を出そうもんなら……。なぁに、安心せい……望む通り地獄の苦しみを味わいながら逝かせてやる」


そう言った邦一さんの表情も声も、未だに脳裏と耳にこびりついて離れやしない。

あの時、初めて人に恐怖心を覚えた。

本能で感じる。

この人は、生き物としての“格”が違うと。


「はっ、なんだそれ。めんどくせぇ……」